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無料で資料ダウンロード都市において重要な文化拠点である飲食店やホテル、クラブ、ライブハウスがCOVID-19の影響により打撃を受けているなかで、現状を乗り越えるためにはどのようなアイデアが必要なのか。文化が芽生え、活気の溢れる都市を再建していくために、わたしたちには何ができるのでしょうか?
この問いに答えるべく、『Night Design Lab』では「ナイトカルチャーの再創造とダンスフロアの未来」をテーマにオンラインイベントを開催。今回はそこで紹介した、いくつかのケーススタディをまとめていきます。
COVID-19の影響により打撃を受けた飲食店やホテル、クラブ、ライブハウスが復興する道筋として、「空間の多目的化」に注目が集まっています。ライブハウスとしてできた場所はライブハウス、クラブとしてできた場所はクラブ、と目的に縛られるのではなく、幅広い用途で空間を活用することで新たなビジネスモデルを模索できます。
『Night Design Lab』でも読み解きを行った「GLOBAL NIGHTTIME RECOVERY PLAN(以下、GNRP)」でも空間の多目的化に関連する事例が多く紹介されています。
その中でも特に印象深かったのが、イーストロンドンにある多目的イベントスペースVUの事例でした。VUはもともとはパーティーやワークショップ、展示会などさまざまなイベントを実施していたのですが、COVID-19の発生に伴い、イベント会場としての運営の継続が難しくなりました。
そこで、VUの運営チームはビジネスモデルの再設計を行いました。自社の持つ資源は何であるか検討した結果、VUの立地はロンドンの金融街に近く、都市のオフィスに自転車で往復する人々にとって貴重な場所だと分かりました。そこでVUは敷地内の一部を自転車置き場としました。またサイクリング業界での信頼性や評判を担保するため、ハイエンドの自転車店とのパートナーシップを結び、週1回バイクのチューニング等のサービス提供を実現しました。これより、VUはCOVID-19の状況でも運営を継続できる新たなビジネスモデルを獲得しました。
1つの空間を多用途で使うことで、新たなビジネスモデルを獲得した事例は他にもあります。渋谷にあるクラブ「ATOM TOKYO」は、コワーキングスペース運営会社「いいオフィス」と提携して、コワーキングスペースとしての運営を開始しました。遊休している昼のクラブ空間を活用することで、厳しい営業自粛の中でも新たな資金源を得ることに成功しました。
このような2つの事例は、COVID-19により厳しい状況が続く中で、業界の未来の切り開くヒントとなるケーススタディだと捉えています。
いま、フランスの首都パリでは「15分都市」という考え方のもと、まちづくりが進められています。15分都市とは自宅から徒歩15分圏内に都市機能のすべてが集約されるように都市をデザインしていくという考え方です。これにより環境に配慮した都市、クリエイティブな人々の集積する都市、インフラの持続可能性の高い都市の実現が可能です。
このような15分都市の施策を後押しする取り組みとして、株式会社MELLOWのフードトラックレンタルの試みと株式会社REEFによる駐車場活用を紹介します。
株式会社MELLOWは、フードトラックをレンタルすることで、ビルとビルの間の公開空地でサービス提供が可能になるほか、土地を借りて店舗を経営するほどの予算が持てない店舗がカジュアルに店舗を持つことを可能にしました。
この取り組みに関連して、株式会社REEFは駐車場にフードトラックの設置を可能にしたり、ゴーストレストランの拠点としての駐車場活用を行ったりしています。
もともと駐車場のスマート管理を行うスタートアップであったREEFは、駐車場が本来持つ価値は「車が停められる」という点ではなく、人々の居住区域からのアクセスの良さだ人ということに注目し、駐車場内にデリバリーを専門としたキッチン設備のみで展開するフードトラックを設置しました。駐車場がそのまま配送拠点となることで配送用のモビリティーの管理が用意になる他、商品のテイクアウトサービスの展開にも対応することができます。
MELLOWやREEFの取り組みにより、サービス提供に空間の制約がなくなり、近隣のコミュティの再編や徒歩圏内の都市機能の見直しが可能になっていくでしょう。
都市とナイトタイムについて議論する際に、必ず議題に上がるのが深夜帯の交通インフラについてです。ナイトタイムの経済活動を繁栄させるためには、深夜帯の交通インフラを整備し、都市全体における回遊性を高める必要があります。
アムステルダムでは、クラブオーナー達が資金を出し合い、ナイトバスを走らせる取り組みが行われていました。クラブのオーナー自らがDIY的に交通インフラをつくることでお客さんの店舗へのアクセスを向上させることに成功しました。
類似した取り組みとして、日本ではクラブageHaもナイトバスの運営を行っています。店舗のある新木場から渋谷への往復バスを運営することによって来場者の足を確保しています。
このような取り組みを実現させるためにはナイトタイムに関わる様々なステークホルダーの「連帯」が必要です。クラブやライブハウス、飲食店やホテルが同じ方向を向き、現状の課題に向き合う場を整えていくことが求められています。
風営法改正への尽力や、ナイトタイムエコノミー推進協議会の設立など、国内においてナイトタイムエコノミーの可能性や価値を広めてきた弁護士の齋藤貴弘さんは、以前に行ったインタビューにおいて「連帯」の必要性についてこのように述べています。
日本では、ナイトタイムエコノミーが音楽産業内で閉じてしまっていますが、本当はもっと大きな可能性を持っています。今後は、音楽の質や文化の価値を守りながら、他の産業にどう付加価値をつけていけるかが大事になっていくのではないでしょうか。
都市やナイトタイムの価値を高めていくためにはどのような取り組みを行うべきか。業界の垣根を超え、連帯していくことでナイトライフの新たな魅力をデザインしていくことにつながるでしょう。
都市設計において重要な役割を果たしているのがオフィスビルです。COVID-19以前では、都心に位置するオフィスビルは最も人気で、家賃も高い空間として人気を誇っていました。しかしながら、リモートワークの普及を背景にオフィス街のグランドレベルへの回帰が起こっています。
なかでも印象的なのが、Epic Gamesの事例です。フォートナイトを運営するEpicGamesは、空洞化しつつあるショッピングセンターを丸ごとオフィスに変える取り組みを行いました。この取り組みによって、ショッピングモールの衰退によって活気を失っていた都市を復興させるきっかけを与えました。オフィス街がグランドレベルへと回帰することでオフィスと都市の接続性が高まります。また、高層ビルに入居するのではなくひとつの大きなフロアを社員全員が共有することで、コミュニケーションがより盛んになることも期待できるでしょう。