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光と音楽、食事とアイデアの祭典「Vivid Sydney」は、ナイトタイムエコノミーの世界的成功事例です。毎年シドニーで開催される都市型イベントで、3週間ほどの会期中には、18時から翌朝まで都市全体がライトアップやイベントにより彩られます。
世界中の人々が一度は行ってみたいと口を揃えるほどですが、その経済規模も莫大です。2022年には来場者数258万人、総収益1億1900万ドルを記録しています。一般的にアリーナ規模の会場でのイベントの主催者収益が30万ドル程度と言われているため、その規模の大きさが分かります。
Vivid Sydneyは都市型イベントのため入場料は掛かりません。期間中に開催されるイベントの一部は有料であったり、毎年9万人ほどが乗車するクルーズを運用しているものの、これらのアクティビティは総収益の一部に過ぎないといわれています。
では、Vivid Sydneyの経済的な成功の要因はどこにあるのでしょうか。それはVivid Sydneyがビジネスカンファレンスとしての側面を担っていることに起因します。スポンサー企業からの協賛金が収益の多くを締めているのです。スポンサー企業にはインテルやピクサー・アニメーション・スタジオといった企業が名を連ねます。Vivid Sydneyは企業にとって、最先端のテクノロジーを駆使したインスタレーションを世界中にPRする場であり、国際的なコネクションを育む場です。イベント会場付近のバーやレストランでは、ビジネスミートアップイベントも開催されています。
ナイトタイムコンテンツを設計する際には、遊びやアクティビティに注目するだけでなく、ビジネスとしての要素を取り入れることで、安定した収益を確保を狙うことができます。
また、Vivid Sydneyはシドニーの地域経済に対してもポジティブな影響を与えます。2022年には1,220万ドルほどの経済的利益をもたらしました。なかでも、多くの恩恵を受けるのは宿泊と飲食の分野です。Vivid Sydneyは目的に長期間シドニーに滞在する旅行者は多く、会期中の総宿泊数は56万7000泊にも昇ります。また、参加者の30%はシドニーのレストラン/カフェ/ホテルで食事をとるともいわれます。
タイのナイトマーケットもナイトタイムエコノミーの成功事例として知られています。タイにはバンコク王宮周辺の寺院やパタヤビーチなど、数多くの観光スポットが存在しますが、ナイトマーケットはナイトタイムの移動と消費を促す観光コンテンツとして注目されています。
タイはアジアで一番の観光大国です。2019年の国際観光客数は3,828万人で世界第9位(アジア第2位)、国際観光収入は630億ドルで世界第4位(アジア第1位)にも及びます。旅行者数もさることながら、タイがこれほどの観光収入を得られているのは、ナイトアクティビティが充実しているからです。
タイ政府観光庁が2019年に実施した調査によると、タイを訪れる旅行者の約82%がナイトマーケットに訪れます。日本では旅行者の主な夜の過ごし方は飲食ですが、ナイトマーケットにはレストランやバーはもちろんのこと、洋服やアクセサリーの販売店からライブ会場まで多種な施設が併設されており、消費を生む仕掛けが整備されています。
ナイトマーケットは地域経済に対して良い影響を与えます。例えば、Talat Rotfai (現在はザ・ワン・ラチャダーとして運営中)はタイで最も有名なナイトマーケットの1つです。もともとは、使用されていない操車場(鉄道の停留所)を利用して始まりましたが、2013年には市内中心部からは離れたエリアに移転となりました。
Talat Rotfaiへの主なアクセスはタクシーとなりましたが、地元民から旅行者にまで変わらず人気を誇っており、新エリアを次々と拡大するほどです。もともとは人気の少ないエリアを、タイの一大観光スポットへと変更させた事例です。
また、ナイトマーケットは雇用の側面でも地域に貢献します。メコン川沿いに位置するナイトマーケットは、地域のインフラプロジェクトとして運営されています。貧困が課題となった地域において、安定した雇用と地域内外からの消費を生むことが期待されています。
ナイトコンテンツを開発する際には、「消費を促す仕掛け」と「地域への経済的メリット」を考慮することが重要です。
ナイトタイムエコノミーの活性化に向けて、NEWSKOOLでも、夜間遊休資産である「寺」を舞台に開催する体験型フェスティバル「煩悩 #BornNow」を展開しています。
①年齢や性別に関係なく誰でも立ち寄れる場という寺の持つ役割の復活
②夜間遊休資産としての寺の活用
③今までに経験したことのない体験価値の提供
という3点を目標にしています。
2016年から開催している「煩悩 #BornNow」ですが、2019年には渋谷区の表参道駅から徒歩2分の善光寺を会場に約1600人の動員を達成しました。日本財団や一般社団法人渋谷未来デザインの後援のもとに、若者、地域住民、渋谷区の行政・企業の担当者など多くの関係者の理解のもとに実施。その社会的意義や経済的価値が認められたことにより、実現しました。
今では、大規模の都市型イベントとして開催されているVivid Sydneyも、元々は照明デザイナーの発案から始まった小規模のライトアップイベントでした。現在のVivid Sydneyの成功は年々規模を拡大し、成功事例を積み重ねたからこそ実現しました。
NEWSKOOLでは、夜間遊休資産を活用した新規事業開発や企業などのステークホルダーを巻き込む座組みの設計などを通じて、都市のナイトタイムエコシステムを整備しています。長期的にナイトタイムを整備していくことは、経済的利益や地域文化継承に役立ちます。
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