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Project

2023

煩悩 #BornNow 江田島

「文化観光×地域創生」のモデルケースの実現を目指して​​

Point

  • 官民連携で推進する文化観光×地域創生のモデルケース
  • 音楽を切り口に江田島の観光資源を掘り起こす旅
  • イベント企画から運営、アートディレクションまでを一気通貫で実行
  • 対話を繰り返すことにより、よそ者から地域の一員へ

Summary

NEWSKOOLは、煩悩実行委員会、一般社団法人江田島市観光協会とともに一夜限りのリトリート旅「煩悩 #BornNow 江田島」を開催。広島県南西の瀬戸内海に浮かび、平安時代からつながる自然、文化、歴史を受け継ぐ島である江田島を舞台に、現地の自然や文化を、音楽とともに最大限体感できるコンテンツを企画しました。

Output(Event)

「音楽」を通じて、江田島の文化と自然を体感する一泊二日の旅
今回のツアーのコンセプトは「音楽を起点とした江田島リトリート旅」。遙か平安の時代より紡がれた江田島の文化と歴史を、NEWSKOOLが再解釈することにより生まれました。

旅の始まりは、明治時代に広島湾要塞の一角として建設された砲台山での特別な晩餐会から。続いて、満天の星空を眺めながら、江田島をイメージしたカクテルを楽しめる星空barや、豊かな自然と風光明媚な瀬戸内海を一望できる江田島荘での宿泊体験が用意されています。翌朝には島の極上朝ご飯を落語とともに楽しむことも。

砲台山での「五感を奮わす」晩餐会
明治時代、広島湾要塞の一角として建設されたユニークベニュー「砲台山」では一夜限りの晩餐会が開催されました。江田島荘の総料理長である小竹隼也氏が創り上げるメニューを、世界のクラブシーンで活躍するアーティストDJ Alamakiのセレクトする音楽が彩りました。

通常の飲食店において店内BGMは空間を彩るための1つの要素ですが、今回の晩餐会では音楽をメインコンテンツに位置づけました。テーブルに料理が運ばれた瞬間に音楽が盛り上がりを迎えたり、コースが後半に差し掛かるにつれて音楽が展開をみせたりと、音楽を通じて体験の緩急を生み出すことで情緒的な価値の訴求を行いました。

光源寺境内での星空バー
砲台山での特別な晩餐会の後は、お寺の境内に広がるラウンジバーへ。星空の下で、お酒やノンアルコールカクテルを片手に大切な人とゆっくり語り合えるような空間です。

バーカウンターには現地で活躍するバーテンダーの方が立ちました。ホスピタリティ溢れる接客とともに広島の地酒をベースとしたカクテルを提供。参加者の方々はヘッドホンから流れる音楽に耳を傾けながら、体を揺らしたり、会話を楽しんだりと思い思いの時間を過ごしている様子が見られました。

全室オーシャンビューの源泉掛け流し温泉宿「江田島荘」
宿泊は、豊かな自然と風光明媚な瀬戸内海を一望できるフロントオーシャンビューの江田島荘。人の温かみを感じられるようなおもてなしと、江田島の雄大な自然を感じることのできる広々とした客室が来場者をもてなしました。

島の極上朝ご飯と落語で元気な朝を
朝食レストラン「ロカヴォーレ(Locavore)」にて地産地消の食材を使った「島のお母さんの朝ご飯」を準備しました。朝食のあとは、新進気鋭の若手落語家の桂枝之進さんによる江田島をテーマとした落語を楽しんでいただきました。

Output(Web)

今までは都心での開催だった煩悩ですが、今回は江田島という自然豊かな土地での開催ということで、クリエイティブの差別化を意識しました。
デザインコンセプトは「音楽と色彩の楽しみを胸に抱く」です。今回の煩悩の核となるコンテンツである寺・レコードといった要素と江田島の特産品であるオリーブ・牡蠣をビジュアルに入れ込みつつ、今までの煩悩との差別化として江田島の伝統や歴史を感じさせる神話感ある色彩を意識しました。
(Graphic Designer : 佐々木 瑠世)

画面をスクロールするにつれて、背景色が変化していくイベントコンテンツ画面。コンテンツは時系列に並んでおり、下への画面をスクロールしていくことで、一日の体験の流れを疑似体験することができます。

Story

夜を起点とした文化観光を考える

新型コロナウイルスによるパンデミックが続き2年半。人々の移動や物理的な交流が制限されるなかで、ナイトタイムや観光、それに基づくソーシャライジングといった余暇の時間とどのように向き合っていくべきか、そんな問いの答えを探しながらの開催となりました。プロジェクトメンバーの鎌田頼人、木村亮裕に「煩悩 #BornNow 江田島(以下、煩悩江田島)」開催の裏側を振り返りながら、「夜間観光」の可能性について読み解いていきます。

—これまで「煩悩 #BornNow」はお寺を利用したミュージックフェスとして開催されていましたが、なぜ今回の煩悩江田島は一泊二日の観光ツアーとして開催したのですか?

鎌田 「煩悩 #BornNow」を観光コンテンツとして展開することで、地域に中長期的に価値を提供できると考えたからです。夜間遊休資産と呼ばれるような地域のユニークベニューを活用することで、人々のディスティネーションとなるようなイベントやコンテンツをデザインする。それを宿泊や飲食と結びつけることで、文化的・経済的に地域を豊かにできるのではないかと思い、煩悩江田島を観光ツアーとして開催しました。

—煩悩江田島は「遙か平安の時代より繋がる自然、食、文化を音楽により再解釈した江田島リトリート旅」と銘打っていたと思います。このコンセプトはどのように生まれたのでしょうか?

鎌田 「音楽と夜」を切り口に地域のオーセンティックな魅力を引き出していくことが、「ナイトタイム×観光」の1つのポテンシャルであり、インバウンド観光復興/活性化のための切り口ではないかと考えています。そのため、今回の煩悩江田島はアフターコロナにおけるインバウンド観光のトレンドとして注目されている「トランスフォーマティブトラベル」をコンセプトに観光ツアーを設計しました。

トランスフォーマティブトラベルとは、日常では得られない特別な体験を通じて人生の変革を促す旅行であり、「ローカル(地域性)」と「オーセンティシティ(本物感)」こそが旅の重要な要素だとする考え方です。人々はモノ消費からコト消費というトレンド変化の中で人々は旅行に新たな価値観との出会いを求めるようになっています。豊かな刺激や気づきを与えてくれるのは、分かりやすくパッケージ化された旅行商品より、地域のリアルな生活者の息吹を感じさせるオーセンティックな観光体験であるはず—。煩悩江田島では、地域の魅力をNEWSKOOL独自の目線で再解釈することで、コンテンツを設計しました。

—「音楽」に注目した背景についても教えて下さい。

鎌田 音楽イベント・コンテンツをきっかけに都市観光を促す「ミュージックツーリズム」という考え方を参考にしました。アフターコロナの地域観光と地域活性化の切り札として注目されており、経済効果だけでなく、地域コミュニティの形成・維持、シビックプライドの醸成、シティプロモーションなど、地域の活性化を促進する効果があるとされています。

江田島でのオーセンティックな滞在体験を音楽を軸に拡張することで、人生観が変わるような豊かな体験を提供できるのではないか。同時に、今までは見えてこなかった新たな江田島の魅力が浮かび上がってくるのではないか。それが今回の煩悩江田島のコンテンツを考える上での1つの指針でした。

—江田島の魅力を「音楽」を切り口に再解釈する際に、具体的にはどのようなプロセスを踏んだのでしょうか?

鎌田 江田島を歩き回りながら地域の人々と交流するという文化人類学的なアプローチを用いました。江田島荘の総料理長であり、砲弾山での晩餐会ではシェフを務めていただいた小竹隼也さんに島を案内してもらい、江田島のおすすめスポットを周りました。

—江田島のオーセンティックな魅力とはどんなところなのでしょうか?

鎌田 豊かな自然、文化、歴史を持つ江田島ですが、その一番の魅力は人だと思っています。島の方々と接していると、江田島のことを誇りに思っており、自身が望むライフスタイルを送っていることが伝わってきます。生活に根付いたストーリーこそが江田島の魅力です。

なので、江田島荘での宿泊体験や島のお母さんの極上朝ご飯、光源寺境内での星空バーは、現地の人々との交流を通じて、江田島のストーリーに触れてもらうコンテンツとして位置づけていました。

—夜の時間を活用したイベントを開催する際には、騒音や警備の問題に対する対処など、地域の人々との合意形成が重要になってくると思います。地域に住む方々や現地の事業者との合意形成はどのように行ったのでしょうか?

木村 前提として煩悩江田島のようなイベントをデザインするときに大切なのは『いかに地域に応援してもらえるか』だと考えています。地域の人の理解なくコンテンツ制作を進めても、できあがるものは表面的で楽しくないものになってしまうし、持続可能性もなくなってしまう。現地の事業者、生活者の方々からの理解を得た上でプロジェクトを進めることを心がけました。

その上で、地域の人々と合意形成を行うにはボトムアップ式に一人ひとりと対話していく以外にはないのではないかと思っています。一見遠回りのように感じるかと思いますが、自らの足で島全体を挨拶回りしたり、島のキーパーソンを数珠繋ぎに紹介してもらうなど、ステークホルダー一人ひとりと信頼関係を築いていくのが、合意形成に向けての一番の近道だと考えています。

—今後の「煩悩 #BornNow」はどのような展開を考えているのでしょうか?

鎌田 地域に長期的に価値を還元する拠点、夜を軸とした社会実験の拠点としての活用を考えて、「HOTEL #BornNow」のように常設空間として「煩悩 #BornNow」を展開できればと考えています。インバウンド観光の復興の兆しが見えてきたいま、外国人観光客に地域の魅力を伝えるコンテンツ開発やコミュニケーション設計も強化していければと考えています。地域の方々との共創の姿勢を大切にしつつ、ナイトタイムエコノミーやインバウンドを視野に入れた夜間観光を推進していければと思いますので、引き続きNEWSKOOLの活動に注目いただければ幸いです。

Credits

■プロジェクト概要
プロジェクト名:「煩悩 #BornNow 江田島」
期間:2020年4月 ~ 2022年5月

■体制
主催:一般社団法人 江田島市観光協会
共催:特別財団法人 日本財団 / 煩悩実行委員会
主幹:合同会社NEWSKOOL
協力:江田島市 / 江田島荘 / 株式会社海風 / 浄土真宗本願寺派海谷山 光源寺 / scheme verge株式会社 / pub pulp / 株式会社RTT / Ozone合同会社 / 株式会社LifeMarket / TicaTica Inc. / SHAMROCK / 江田島バス株式会社 / 富士交通株式会社 / 有限会社能美タクシー / Crux Inc. 
出演:DJ ALAMAKI / SHINTARAW / 桂枝之進
料理提供:小竹 隼也(江田島荘)

■スタッフクレジット
Producer:鎌田 頼人 / 木村 亮裕
Graphic Designer : 佐々木 瑠世 / 久保 文乃
Contents Director : 木村 亮裕 / 佐藤 遼 / 栃尾 香里
Web Designer : 廣石 健太
Developer : 丸山 直樹
Staff:小松 知輝 / 西村 梨沙 / 富谷 桃子 / 空 武士 / 三宅 竣介 / 湯浅 遼太
Special Thanks:江田島市民の皆様 / ご来島の皆様 / 岸 雅基
Photography:大野 方裕
Movie:川崎 愛恵
Edit:川崎 愛恵

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